xxxさくらんぼ
※ このSSは8/29の絵チャで合作絵が描かれている間に、合作気分を味わうために書かれたものです。
いつもよりラフい+改行多いですがご容赦ください。
『Motherland』のギルドハウス。
居間に置かれたソファでくつろぐアルカージィのところへヴァレリオがやって来る。手にした容器には、淡く色づいたさくらんぼうが山と盛られている。
「アル。晩御飯も食べてなかっただろう?
良かったらこれを……」
言いながら隣に腰かける。
アルカージィは物憂げに目を細め、そっぽを向く。
昼間さりげなくかけた誘いを断られたのを未だに根にもっているらしい。
「いらないもん」
「でも……」
「いらないったら、いらないの!」
そっぽを向いたまま突っぱねるアルカージィにヴァレリオは困惑する。
相方のウィザードが何故急に拗ねだしたのかまったく原因がわからないのだ。
「ほら、アル。おいしいよ」
「……」
さくらんぼうのひとつを摘んで向けてやっても、アルカージィは微動だにしない。
しばらく差し出していたが見ようともしない。
仕方無しにヴァレリオはさくらんぼうを自分で食べる。
間近にいる者だけに聞こえる微かな咀嚼音。
アルカージィがちらりとヴァレリオを向く。
「……」
「……食べるかい?」
「い、いらない」
ふい、とまたもそっぽを向くアルカージィに、ヴァレリオが笑みを浮かべる。
「ほら、見てご覧。二個つながってるよ」
「……」
「食べたいのなら我慢しなくても……」
「本当に我慢しなくて良いの?」
「勿論。このさくらんぼうはアルのために買ってきたんだから」
言いながら、ふたつ繋がったさくらんぼうの片方を口にするヴァレリオ。
甘い中、ほのかに混じる酸味が心地良い。
「ふうん……それじゃあ」
ソファを僅かに揺らしながらアルカージィが姿勢を変える。
「我慢しないで食べるよ」
「ちょ、……アル……!?」
ようやくこちらを向いたかと思えば顔を近づけてくるアルカージィに、ヴァレリオは驚きの声を漏らす。
身じろぐヴァレリオの頬へ、繊細な細い指先が添えられる。
僅かな力も篭っていないというのに何故だか、身じろぎひとつ出来なくなる。
触れた指先が「動かないで」と伝えているからかもしれない。
「食べたいものは我慢しなくて良いんだよね?」
「さ、さくらんぼうの話……だぞ?」
たじろぎながらの反論はアルカージィの満面の笑みに抑え込まれる。
近づいてくる艶やかな唇が、さくらんぼうの片方を銜える。
薄く開いた唇の合間に除く濃いピンクの実がどこか官能的にさえ思えて、ヴァレリオは頬を染める。

間近に見詰め合うまま、どちらからともなくさくらんぼうを食べる。
ふたつの実を繋いでいた部分がソファに落ちる。
「ア、ル……」
戸惑いに震える唇を塞ぐようにアルカージィの唇が重なる。
甘い香りまでが重なり合ってより濃厚になるのが、わかる。
アルカージィの舌が入り込んでくる感触。
つい昨日も味わったばかりなのに、もう懐かしい。
「……っ、ん……ぅ」
口内を這いまわる舌にヴァレリオが眉を顰める。
舌のやわらかい感触と感触の間に、硬いものが触れる。
その異質な感触が、熱にうかされたようだったヴァレリオの意識に、ここが居間であることを思い出させる。
「ぁ、――……っ」
アルカージィの巧みな舌技には逆らえず、そのまま流されてしまう。
二階で扉の開く音が聞こえた。
「っ!」
「わ……!」
音に驚いたヴァレリオに突き飛ばされて、アルカージィが唇を離す。
よろめきながら離れたアルカージィは非常に不満そうに頬を膨らませた。
「……ヴァルが、突き飛ばした」
「し、仕方ないだろう。誰か、来るかもしれないんだから」
「だってヴァルが我慢しなくて良いっていったもん」
「時と場合を考えないか!」
「わかったよ。じゃあ、場所を変えれば良いんだよね」
ソファから立ち上がりアルカージィは明るい笑みを浮かべる。
さも名案を思いついたと言わんばかりの表情でヴァレリオの手を引き立ち上がらせる。
「僕の部屋行こう。このあいだ改造して鍵かかるようにしておいたから」
「ま、また勝手にそういうことを……」
「こんなこともあろうかと思って! それに」
すいと伸ばされた細い手がヴァレリオの股間を軽く撫でる。
「っ、……あ、アル!」
「ヴァルも、我慢できないでしょう?」
「……」
耳まで赤くなるヴァレリオに腕を回して、アルカージィが囁く。
「食べたいときは我慢しちゃダメなんだよねっ」
end?
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