暇。 ものすごーーーーく、暇。 今日は朝までいちゃつこうと思ってたのに、気づいたらヴァルは寝てるし。 腕まくらなんてしちゃってるから本読んだりとか出来ないし。 つまんない。 だってさ、まだ夜の十時だよ? 何でヴァルってこんなにすぐに、眠くなっちゃうんだろ。 僕なんて、眠気があっても夜が深くなってくると目がさえてくるのに。 太陽に愛されてるのかな……。 髪とかすごい、日光吸ってるっぽい色だもんね。 傍にいると、ほしたばっかりの布団みたいに気持ち良いし。 それに比べると僕のなんて、いかにも夜っぽい髪だなあ。 なんて考えてたらちょっとだけ胸がぎゅうってした。 別に日光なんて好きなわけじゃないよ。 日の高い内なんて、あんまり外なんて出たくもないし。 お昼の間は寝てる方が好きだもん。 だから別に、どうだって良いんだけど。 でも、ちょっとだけ、ヴァルのことが心配になったんだ。 もしかしてこうやって、いつもくっついてるのって負担になりすぎてない?とか。 実はこうやっていつも眠いのってその所為?とか。 普段は他の人なんて、本当はどうでも良くって気にもかけないのにね。 ヴァルのことだけいっつも気になるから、不思議。 不思議で、ちょっとだけ、不安。 これって「頼りすぎだよ」って警告かな。 これでヴァルがいなくなったらどうするのって声は、いつも聞こえる。 僕の中の僕を嫌いな僕の声。 今も、ヴァルにくっついてる僕を遠くから近くから見て、嗤ってる。 そんなに見てたいなら見ていれば良いよ。 ヴァルのことぎゅって抱きしめて、キスをした。 髪とか額とか唇とか、目元とか頬とか、首筋とか。 首を伸ばして届くところ全部に口づけを落とす。 ヴァルが僕だけに許してくれていること。 僕の中の僕には出来ないこと。 僕の中の僕が悔しそうに見てる。 僕の中の僕もヴァルが好きだから。 だから余計に、不安がってるんだ。 知ってるんだ……。 ……ヴァルにいっぱいキスしたからかな。 眠くなってきて、欠伸も出た。 たぶん、えっと、もうすぐ日付が変わる頃かな。 今から寝たら八時くらいには、もしかして起きられるかも。 ヴァルは六時に起きて、七時には僕を起こしにくるから、それでも遅いんだけど。 でもね。 ヴァルに「早く起きろ」って怒られながらうとうとするのって大好きなんだ。 寝ぼけたふりしてキスをねだるのも、大好き。 困った風にしながら「おはよう」ってキスしてくれるのも、大好き。 こんなこと言ったら怒られちゃうから、ヴァルにはずーっと秘密だけど。 ああ、今、幸せだなあ……。 今ならちょっとだけ、一瞬だけ、カミサマに感謝しても良いかも。 ……おやすみなさい。