しっと。


 どうも、ユベールです。
 ただいま相方兼恋人(なはず)のミミルと一緒に、宿屋に来ています。
 ミミルは小柄で、プラチナブロンドが綺麗で、もう、滅茶苦茶かわいいプリーストです。
 俺の方はといえば丈夫なだけがとりえの、うだつのあがらないBSです。

 ……なんて。
 遠い目をして自分に自己紹介なんてしないとやってられません。
 恋人とベッドがでんとある部屋に、二人きり。
 そんな甘々一直線の状況だっていうのに、です。
 原因はひとつ、ミミルの言動です。これっきゃありません。

「ぺこ。はい、あーんしてください」
「クエックエクエ〜」
「美味しいですか?」
「クエ!」

 というのも、ミミルはペコペコが大好きなんです。
 特に自分の飼っているペコペコの可愛がりようといったら……。
 もう、初孫をよろこぶ爺さんというか、目に入れてもかわいくないっていうか。
 俺のことなんて眼中にありませんって感じでいちゃついてくれてます。
 ぶっちゃけ、たまの二人きりのときくらいペットはしまっておいて欲しいです。
 でも、ここまでうれしそうな顔をされると、そんなこと言えないわけで。

「ぺこはいつも良い子でかわいいですね」
「クエ〜」

 なんて言いながらミミルがぺこの頬にキスしています。
 って、キスですか?
 俺がどれだけ頼んでも絶対にしてくれないのに、キスですか?
 何ですか、あれですか。俺は鳥以下の存在ですか。

 窓辺の椅子に座って、ミミルはぺこといちゃついています。
 俺はといえば一人でぽつんとベッドの端っこに腰かけるだけ。
 ミミルたちの方をちらって見たら、ぺこが得意げに俺を見返してきました。
 しかも鼻で笑うみたいにして首を振りやがりましたよ、この鳥。

「ミミルー。俺にも、ちゅーしてください」

 悔しいから二人(一人と一匹?)の邪魔をしてやろうと声をかけます。
 何で恋人の俺が、こんな気分を味わわないといけないのでしょうか。

「え、ええええ!?」
「ちゅーしてくださいよ。口じゃなくても、ほっぺとかで良いですから」
「無理、無理です。無理、絶対、どうやっても無理です!」
「…………」

 何でそこまで、ってくらい思い切り、拒絶された。
 顔どころか耳とか、法衣の襟元から覗く首とかまで赤くして。
 ぶんぶか首を振って、胸の前で手を振る仕草も可愛いなとか。
 ……いやいや、確かにミミルは可愛いが、それとこれとは別だ。
 ぺこには簡単に出来るくせに、俺にするのはそんなに嫌なのか。
 ちょっと、不貞腐れモードです。

「何で、俺にはしてくれないんですか」
「だって、ほ、ほら……。ぺこですから!」
「理由になってな」
「ぅ……」

 俺の不機嫌オーラに即座に反応して、ミミルが涙目になっています。
 ミミルは天然にこんな反応をしてくるから、怒るに怒れないのです。
 ていうか、ちょっと卑怯ですよね、こういうのって。
 これが惚れた弱みって言うんでしょうか、お母さん。

「別に、良いですけどね。してくれないなら」
「え、えっと……」
「俺一人で寝てますから」

 どれだけ惚れてても、ちょっとさすがに寂しさに耐え切れません。
 靴を脱いで床に転がして、一人でベッドの上に寝転びます。
 もともと二人で寝る用のベッドだから、一人だとかなり広く感じます。
 その広さがそのまま俺の寂しさみたいで……情けないことにちょっと、泣きそうです。
 ミミルには、そんなこと、気づかれたくありません。
 ぺことラブラブしている姿なんて、もう、嫉妬のFWに焼かれてしまいそうですけど。
 でも、やっぱり。
 自分の好きな人が一番良い顔をするから。
 だから、ぺことの時間を、そういう風に嫌な気分にさせて邪魔するのは、嫌です。
 ささやかな、ささやかすぎる、俺のプライドです。

 うつぶせになって不貞寝開始です。
 どうせ俺のことなんて放置してミミルはぺこといちゃつくんでしょ。
 なんて思っていたのですが、何故かしんと静まり返っています。
 何があったのか、ちょっとだけ気になります。
 でも俺にも意地があります。
 気にしてなんてやらない、と、矛盾したことを考えて無視します。

「ユベール……?」

 不安そうな声が聞こえてきても、心を鬼にして無視します。

「寝ちゃったんですか?」

 そんなに寂しそうな声で言われても、根性で無視します。
 BSになるときの刺青を彫る痛みに比べたら、何とか大丈夫です。

「ユベール……」

 な、なんでそんなに悲しそうな声で言うんですか。
 騙されません。騙されませんよ。
 そうやって俺に縋っておいて、どうせ後でぺこといちゃつくんですから。
 それにしても鳥にこんなに嫉妬して張り合ってる俺っていうのも情けないですね。
 ……気づかなかったことにしておきます。

「本当に、寝ちゃったの……?」

 ぎし……っとベッドが軋みます。
 ちょこちょこ、小柄な人が膝で進んでくるみたいな振動が続きます。
 見てないけど、きっとそうです。
 ミミルはなんで、何をやっていてもかわいいんでしょうか。

「ほんとに、ほんとの本当に?」

 確認するみたいに何度も尋ねています。
 俺は寝たふりを続けることにしました。
 ぐうーと、いかにもないびきをかいてみせました。
 ミミルはすっかり信じきったみたいです。

「ユベール、の……ばか……」

 ちょっぴり泣きそうな声でミミルが呟きます。
 枕に顔を伏せてる俺の、すぐ傍まで来ているみたいです。
 肩に、ミミルの体温がちょっとだけ、伝わってきています。
 それだけで泣きそうになるくらい、俺は不安になっていたようです。

「俺、誰かとつきあうのなんて、初めてで」

 ぺちんと、ミミルの指先が俺の頭をたたきました。
 力が入ってなくて全然痛くないんですけど、不満です。
 俺、別に、何もたたかれるようなこと、してないですよね?

「二人で一緒にいるだけで、照れるし、緊張するんですっ」

 べちん。べちん。ばちっ。
 指先どころか手のひら全体で、俺の頭をたたきだしました。
 いえ、痛くはないんですけどね。
 振動が丁度、酔いそうな感じなんです。

「だ、だいたい、ユベールは慣れてるかもしれない、けど」

 いやいや、待ってくださいよ。
 確かに俺は初恋じゃないですよ、そりゃね。
 でも、ミミルといるときは、それなりに緊張だってしてるし。
 ただそれを表に出してないだけなんです。
 っていうか、ミミルだって、全然、そんな風に見えないじゃないですか。

「俺は、普通の会話、ユベールとするだけで、勇気が人一倍、必要なんですからね」

 いやだから、全然、そうは見えませんでしたから。
 ぺむ、と。ミミルの手が俺の頭に乗っかります。
 ちょっと気持ち良いかも……。
 ぺこの気持ちがよくわかりました。

「二人きりだと、間がもたなくて、ぺこと話しちゃうのに」

 ああ、だから俺といるときはいつも、ぺこを孵化させてるんですね。
 言ってくれればもうちょっと、それなりに何とかしたのに。
 もっと賑やかなところでデートするとか。
 もっとゆっくり、会話のペースを落とすとか。

「ユベール、そういうときばっかり、変なこと、言うし」

 またちょっと、泣きそうな声。
 変なことってあれですか。さっきの「ちゅーして」とかですか。
 それは全然、変じゃないです。むしろ恋人の当然の権利です。
 何、言ってるんですか。

「さっきまで普通にしてくれてたのに、急に寝ちゃうし……」

 ぽた、って、シャツに冷たい雫が落ちてきました。
 BSのシャツは薄いから、雨とか降るとかなり困るんです。
 でもここは室内なわけで……えっと、つまり……。

「ユベール、俺のこと気にかけてくれるのに、自分のこと、何も」

 ひっくひっくと、しゃくりあげる声が聞こえます。
 鼻をすするみたいな音も。

「何も、言って……くれない、し……っ」

 そう言って、とうとう、泣き出してしまいました。
 ばか。
 時々、そんな感じの呟きが、涙の粒と一緒に落ちてきます。

 何ででしょう。
 理不尽なことを言われているはずなのに、とても胸が痛いです。
 よくわからないときは徹底的にその原因を考えてみろ。
 生粋の商売人だった父は、よくそう言っていました。
 俺は父のことを尊敬していますから、それに従ってみます。

 考えて考えて、ようやくわかりました。
 何でこんなに、胸が痛いのか。
 要するに、ミミルの言葉のとおりだったんです。
 ミミルへの要求とか、そういうことを一切合財、胸にしまいこんでいました。
 汚い嫉妬とか、強すぎる愛情とか、構ってもらえない寂しさとか、全部。
 それが、ミミルのためになると、思ったから。
 でも、もしかしたら俺は、間違っていたのかも、しれません。

 ちらっとミミルを見たら、両手でかわるがわる、顔を拭っています。
 小動物の毛づくろいみたいで、ちょっと愛らしいです。
 なんて思っているのがばれたら怒られそうですが。

「ミミル」
「っえ……!?」

 寝てると思っていた俺に急に腕をつかまれたからでしょうか。
 硬直したミミルをそのまま引き寄せて、思い切り抱きしめました。

「ごめん、な」
「なななななな何で起きてるんですか!」
「いや反応するところはそこじゃなくてですね」
「寝てると思ったのに……」

 寝てると思ったなら、声に出して話しかけなくても……。
 なんてことを言うとまた泣いちゃいそうだったので止めておきます。
 まあ、ミミルは泣き顔もかわいらしいんですけどね。

「ミミルのこと、全部知ってると思ってました」
「ううん。ユベールは、いっぱい俺のこと、知っててくれてるですよ」
「でも、全然わかっていませんでした」

 白い頬に残る涙の跡を拭います。
 ぎゅっと目を瞑って身じろぐミミルのかわいらしさは、ちょっと犯罪的です。
 愛らしすぎます。
 何ですか。放置プレイで焦らしまくってからご褒美くれてるんですか。
 滅茶苦茶かわいい顔をして、ミミルさんは天然サドっこですか。
 ていうかこれは、GOサインですか。そう思って良いんですよね。

「だから」
「ぅゃ……っ」
「これからはもっと、ミミルのことを知りたいです」
「う、うー……」
「ミミルにも、俺のことをもっと、知って欲しい……」

 耳たぶを軽くくわえたまま言うと、ミミルが足をばたつかせます。
 体を重ねたことはなくてもミミルがくすぐりに弱いのはリサーチ済みです。
 そのせいでいつも、ギルメンたちからからかわれまくりですから。
 いえね、その光景を見るのは非常に腹立たしいんですが。

「母がずっと言っていました。友とは拳で、恋人とは体で語り合え、と」
「っ……。…………え……?」
「ミミルは俺の恋人なので、是非とも体で語り合おうと思います」
「え、えっと、えっと……。ユベール……?」

 急な展開についていけていないのか、ミミルがこてんと首を傾げています。
 何ですか、この愛らしい小動物は。
 逃げられないように腕の中に閉じ込めておきます。
 さり気なくさり気なく、手のひらでミミルの小さな背中をさすって……。

「ミミルは俺のこと、知りたいんですよね?」
「う、うん。知りたいです。とっても」
「古人いわく、恋人との語らいは体でしろ、と」
「う……ん……?」
「つまり総合すると、ミミルは俺とセ」
「わーわーわー! そそそそういうことを大声で言わないでください!」

 目を瞑ってぶんぶん首を振りながらミミルがわめいています。
 至近距離での大声に、さしもの俺もちょっと頭がくらくらします。
 ダンサーのスクリームなんて、目じゃありません。
 えっと、それよりも、大声を出してるのは俺じゃなくてミミルだと思うんです。
 まあ可愛いから良いんですけど。

「ミミルは俺とするの……嫌ですか?」
「え!? い、嫌じゃないです……でも、でもでも」
「思い立ったが吉日」
「まだお付き合いして半年だし!」
「善は急げ」
「うー……」
「有言実行」

 耳の孔に舌を差し入れながら囁いてみます。
 腕の中でミミルの体が跳ねるのが面白くて、ついつい何度もしてしまいます。
 好きですよ。
 大好きですよ。
 可愛い。
 愛してます。
 ずっと傍にいてください。
 そんな、ことばっかり何度も何度も。
 普段は言わない言葉を、何度も何度も。

 何で普段は言わないかって?
 俺だって、照れるんです。恥ずかしくなるんです。
 どこでもいつでも口説けるイケイケ兄ちゃんとは違うんです。

「ん……っあ……」

 最初はちゃんとしていた声が、次第に熱っぽくなっていきます。
 いつものミミルの声よりも色っぽいです。
 もうそれだけで、俺は腰の中心が熱く硬くなっていくのを感じました。
 だって尋常じゃない艶があるんです。と、自分に言い訳をします。
 俺がAGI型だからって、そっちまで早いわけじゃないんですよ、本当。

「ユベー……ル……っ」
「二人で、気持ち良く、なりましょう」
「っふ、ぁん……」

 耳の孔から舌先を出して、そのまま首筋まで辿っていきます。
 普段はきっちりとめられている襟元を緩めながら。
 何でしょう。法衣の襟元を崩すって、すごく背徳的で、ぞくぞくきます。
 露になった白い首筋にいくつもいくつも、赤い跡を散らしていきます。
 ちょっと吸ったり舐めたりするだけで面白いくらいの反応があります。
 硬くなった俺の股間に、ミミルの、ちょっと硬くなってきたアレがあたってます。
 それだけで、何だか、もう、イきそうなくらい、気持ち良いです。

「ひっ、う……ぁ」

 法衣の上着を半端に脱がせて、下のシャツをまくりあげて。
 下から手を差し入れて直接、胸の突起をつまみあげます。
 爪の先でちょっと強くしごくだけでミミルはがくがく体を震わせて喘ぎます。
 ぎゅって、指先だけ俺の服に掴まるのが、愛しくてたまりません。

「ぅく……っ」

 びくっと体を丸めるようにしてミミルが身を硬くします。
 調子に乗って指先に力を入れすぎたでしょうか。
 突起をなだめるように指の腹で撫でてから、細い腰へ滑らせていきます。
 ミミルが息を呑むのが、聞こえました。

「ミミル。ちょっと力を抜いてくださいね」
「ゃ、あ……っ」

 背中側から腰を撫でていた指を、前へ。
 そっとベルトを抜き取って法衣のズボンをくつろげます。
 下着の上からちょっと触っただけで、完全にミミルのがたちあがります。
 窮屈そうなそれを取り出してやるとミミルは涙目で俺を見上げてきます。
 上目遣いが可愛くて、そのまま勢いで、ミミルをベッドに押し倒しました。
 これで我慢できるほど、俺はまだ、大人じゃないんです。

「や、やだやだっ嫌ですっ!」
「わ……。暴れないでください」
「だだだって恥ずかしいですっ」

 ばたつく足を抱え込んで、ズボンも下着も脱がせてしまいます。
 黒い法衣の上着と、乱れたシャツだけの、ミミル。
 真白な頬にさっと朱がさしていて、艶かしいです。
 滅茶苦茶そそります。
 見てるだけで、もう、股間が痛いほどです。

「ミミル」
「な、なあに……?」
「俺も、これでも、結構恥ずかしいんです」
「う、嘘」
「本当、顔から火が出そうなくらい……」
「じゃ、どうしてそんな、余裕たっぷりなんですか〜っ」

 涙ぐんで言われてしまいました。
 余裕たっぷりに見せてないと、だって、それこそ恥ずかしいじゃないですか。
 おもいっきり恥ずかしがってるミミルには、言えないですけど。

「っ――ぁん……ふぅ……っあ」

 硬くたちあがったミミルのそれに指を絡めて、弄ってみました。
 それだけでもう露がにじんできて、見てなくても触ってるだけで、やらしいです。
 なんていうと、殴り飛ばされそうなのでやめておきます。
 ほんの少し、何度か手を動かして……
 ミミルはあっけないくらいあっさりと、俺の手に精を放っていました。

「う……。や、だ……」

 両手で顔を隠しながらミミルが恥らっています。
 言葉の上だけの「嫌」でも、こう連呼されると、ちょっと寂しいです。
 恥じらいからくるものだと、わかっていても。
 でも今は、心からの拒絶じゃないってだけで、すごく、嬉しいです。

「ひゃう……っ」

 ミミルの精液で濡れた指を、尻の間のすぼまりへ。
 触れさせた瞬間、細く高い悲鳴が漏れて、きゅっと入り口が締まりました。
 何度も撫でて緩まるのを待ってから、ゆっくり、人差し指を入れていきます。
 それが馴染んだら、今度は、もう一本。
 それから、もう一本。
 三本の指をミミルに馴染ませる頃には、もう、俺自身には何ひとつ刺激がないのに
 後ひとつ何かきっかけがあったら即イきそうなくらいになっていました。

「ぅっ……ふ、ぁ……んぅ」

 ちょっと掠れたような、濡れた声が途切れ途切れにあがります。
 俺もつられて、熱っぽい息を漏らしてしまいます。
 鼻息を荒くしてるって思われてたら、ちょっと嫌です。
 なんて、ミミルはそんなこと、気にしてる余裕もなさそうですけど。

「ミミル……。良いですか?」
「や、ぅ……」

 口では嫌、と舌ったらずに言うくせに、こくんと頷いています。
 上の口ばっかり素直じゃないなんて、と言いそうになって、慌ててやめます。
 これを言ったら本気で泣かれそうですから。

 指をゆっくり抜いて、代わりに、俺のの先端を押し付けます。
 ぐっと腰を進めると抵抗があって、ちょっと、戸惑いました。
 解し方が足りなかったかな、とか。
 初めての人とするのは、そういえば初めてだったな、とか。
 もろもろの不安は、たぶん、相手がミミルだからなのでしょう。
 ミミルは、今までの誰よりも、大好きだから。
 ちょっとでも傷つけることは、したくないから。
 こんなに、不安になって、しまうのでしょう。

「っ――――!!」

 ミミルが声にならない声をあげて、喉を晒します。
 白い喉にもいくつか俺のつけたキスマークがあります。
 それを見ながら、ミミルの熱いナカに俺自身を埋め込んでいきます。
 時間をかけて根元までゆっくり。
 もう、それだけで本当に出してしまいそうになってしまいます。
 さすがにそれは、と唇を噛んで耐えてみますが、なかなか難しいです。
 ミミルも、シーツを握りしめて震えています。
 痛い、という感じではなくて、俺と同じ、快感を堪えてるような顔です。
 やわらかくて、ちょっと弾力のある壁が、俺を咥え込んでいて……

「ミミ、ル……っ」
「……っふ、ぅん……」

 ひくひく、入り口が収縮してるところに、ちょっとだけ腰を前後させます。
 もっと長く楽しみたいのに、我慢できそうにありません。
 ミミルの名前を呼んで、そのまま体内に、出してしまいました。
 その間にもミミルがいっぱい締め付けてきて、萎える間もなく俺はまた腰を動かしてしまいます。
 ミミルの額に汗が浮かんで髪が張り付いていて、色っぽいです。

「ミミル……。ミミル、今度、は……一緒に」
「っ……ん、う……。ひ、ぅあ……」

 涙に潤んだ瞳が俺を見つめてきます。
 痛そうなくらいにシーツを握る指の間へ、指を滑らせて、やわらかく握ります。
 それだけでちょっとミミルが安心して見えたのは、目の錯覚でしょうか。

「ふ、ぅあ……ぁ、ああ……っ」

 入り口ぎりぎりまで引き抜いては、奥まで一気に突き入れて。
 時々、浅く出し入れをくりかえして。
 さっき出してしまったから、ちょっと動くだけで水音が響きます。
 ミミルは恥ずかしそうにしてますが、俺だって、ちょっとは恥ずかしいんです。

 ちらっと見たらミミルのが辛そうなくらい張り詰めていました。
 出し入れを続けながら軽くそこをしごいてやります。
 ミミルの肩がびくんとして、そのままのぼりつめていく気配がします。
 俺ももう、イきそうだったので、そのまま、一緒に。

 ひとつになる、感覚。
 俺と、ミミルと、どっちが先だったのかなんて、わかりません。
 二人してくっついて、うとうとしている間。
 天使が腕の中にいるーなんて、ちょっと思ってたのを、覚えてるだけです。

 * * *

 そんな風にしてうとうとしていたんですが。
 頭に何か鈍い衝撃を感じて俺だけ目を覚ましました。
 ちなみにミミルは俺の腕枕でくーくー寝ています。
 ちょっとだけ涙の残った目元が可愛いので、とりあえずキスしてきます。

「クエ〜」

 低い声が耳元で聞こえました。
 うわ、そういえば忘れていましたけど、ぺこって、卵になってなかったような……。
 恐る恐る振り向いてみると、鬼のような形相のぺこがいます。
 主人を泣かせた、とでも思っているのでしょうか。
 まさかとは思いますが、鳥でも嫉妬するんですか?

「クエッ!」

 小さな声でぺこが鳴きました。
 ミミルを起こさないように気遣っているのかもしれません。
 それならついでに、俺の頭をつつくのはやめて欲しいんですが。
 いた、痛いです。滅茶苦茶痛いです。
 何なんですか、つつくのはともかく、何でこのタイミングなんですか。

「…………」

 もしかして。
 まさかとは思いますが。
 ミミルが拒んでいなかったから。邪魔になると思ったから。
 だから、俺がミミルに手を出している間だけは大人しくしていたんでしょうか。
 それでも嫉妬はとまらなくてミミルが寝てる間に、腹いせ……?
 ミミルが起きて、狩りへ行ったらぺこは卵に戻されるから。
 そうじゃなくてもミミルが見てる前では、こんなこと、出来ないだろうから。

 …………なんて。
 鳥頭がそんなこと、考えてるわけないですよね……?

 そんな俺の考えがわかったからかどうか。
 ぺこが思いっきり、俺の頭を連打してきました。
 痛い。めっちゃ痛いです。
 こんな鳥、だいっきらいです。ほんと、やめてください。
 何とかしてくださいよ、飼い主さん。

 助けを求めようと見た先のミミルの寝顔は、
 この世のものとは思えないくらい愛らしくて、気持ち良さそうで、
 起こすなんて鬼の所業としか思えないのです。
 だから俺は、仕方なく起こすのを断念して、ぺこの猛打を甘受するのでした。

 今日の晩御飯は、焼き鳥にしよう、なんて思いながらですけれど……。



end

















2006/04/24
 ムラムラしてやった。今では反省している。クエッ。